媒体社として、新しい表現への挑戦
『当社は一般的な広告代理店としての機能に加え、駅貼りポスターなどを管理する媒体社としての側面も併せ持っています。これまでも「Metro Ad Creative Award」など、既存の枠にとらわれない表現を模索してきましたが、注目度の高い渋谷エリアにおいて、クリエイティブの視点から当社媒体を新鮮に使っていただけるというコンセプトに共感し、参画を決めました』。
動と静が交差する「シブハコビジョン」
今回の“舞台”となるのは、銀座線渋谷駅改札内に設置された「シブハコビジョン(以下、シブハコ)」。2025年4月に誕生したメトロアド初の大型デジタルサイネージだ。その名の通り箱状の構造を持ち、高さ3.4m×幅5.4mのLEDビジョンと、筐体を包み込むシートラッピングを組み合わせることで、動的な映像と静的なグラフィックを統合した表現が可能になる。
『シブハコの魅力は、動的なデジタル素材と静的なグラフィックが絡み合うことで生まれる表現の広がりにあります。靴箱から靴が飛び出すように見せたり、ラッピングがめくれて中からオブジェクトが現れるように見せたりと、媒体特性を生かした演出が可能です。アーティストの皆様による作品展示を通して、この媒体がもつポテンシャルがさらに際立つことを期待しています』。
広告を止め、アートに捧げる1週間
今回、運用面でも大きな決断が下された。
イベント期間中、通常の企業広告を一切放映せず、シブハコを「SCREENS CONTEXTUALIZED」専用のアート展示空間として提供するという。
『2月9日の週の枠を丸ごと確保し、広告は一切流さずイベント専用とします。社内ではさまざまな議論がありましたが、広告主の意向に応えるだけではなく、媒体社として新しい表現や文化的取り組みに挑戦する姿勢を示すことは、今後のメディア価値の向上につながると判断しました』。
改札口が、アートとの出会いの場所になる
今回のSCREENS CONTEXTUALIZEDでは、シブハコに加え、同じく銀座線渋谷駅に設置された「メトロ改札口ビジョン」も展示会場となる。
メトロ改札口ビジョンは、2025年1月に誕生した東京メトロの新しいデジタルサイネージシリーズだ。改札口という、誰もが必ず通過する場所に設置された75インチの縦型ディスプレイは、駅利用者の視界に自然と入り込む。
シブハコビジョンがホーム上で圧倒的な存在感を放つ大型メディアだとすれば、メトロ改札口ビジョンは日常の動線に溶け込みながらも確実に目に留まるメディアだ。規模も特性も異なる2つのスクリーンが連携することで、銀座線渋谷駅全体がひとつの展示空間として機能する。
駅を利用する人々は、改札を通り、ホームへ向かい、電車を待つ——その一連の移動体験の中で、作品と出会うことになる。
OOHが持つ本質的な価値
スマートフォン上で完結する体験とは異なり、駅というフィジカルな空間で展開されるアートは、その場を行き交う人々の五感に直接訴えかける。移動の“通過点”にすぎなかった場所が、思わず足を止める“目的地”へと変わる。そのリアルな体験価値こそが、OOH(屋外広告)が持つ本質的な魅力だと鈴木氏は語る。
『Web広告やグラフィックにはない、見て・感じて・触れるという五感を伴う点が、OOHならではの価値です。だからこそ既成概念を超え、新しい表現への挑戦を続けたい。DIG SHIBUYAを通じ、媒体社としてその姿勢を明確に示していきたいと考えています』。
メトロアドエージェンシーが今回仕掛けるのは、単なるイベント協賛ではない。
駅空間が本来持つ可能性を解放し、メディアとしての新たな価値を創造する実験である。2026年2月、シブハコビジョンが生み出す熱量は、広告とアートの境界を鮮やかに溶かしていくだろう。