街に溶け込むスクリーン——シブヤテレビジョンが語る、ビジョン運営の"見えない仕事"

SCREENS CONTEXTUALIZED · Partner Interview vol.2

街に溶け込むスクリーン——シブヤテレビジョンが語る、ビジョン運営の"見えない仕事"

20年以上にわたり渋谷の街頭ビジョンを運営してきたシブヤテレビジョン。輝度劣化への対応、音響規制との折衝、刻一刻と変わる放映スケジュール。表面には現れない運営の工夫が、街並みの中にスクリーンを溶け込ませてきた。

Speaker
シブヤテレビジョン株式会社

渋谷の街と歩んできた20年以上の歴史

シブヤテレビジョンは、街頭ビジョンの運営を中心に、渋谷の活性化を望むコミュニティの思いと、渋谷を発信源として製品やサービスをアピールしたい企業の思いをシンクロさせる、多彩なイベントの企画・制作を手がけてきた。

今回のSCREENS CONTEXTUALIZEDへの協力について、担当者は次のように語る。

『私たちは長年、渋谷の街頭ビジョンを運営してきましたが、その本質は単なる広告媒体ではなく、街の風景の一部であり、人々の日常に溶け込む存在だと考えています。今回のプロジェクトは、ビジョンが持つ文化的な可能性を示す絶好の機会であり、渋谷の街とともに歩んできた私たちだからこそ貢献できることがあると感じました』。

渋谷を彩る巨大スクリーン

同社が運営する街頭ビジョンの中でも、特にインパクトがあるのが、渋谷モディ壁面の「集英社ビジョン」だ。高さ約10.6m、幅約8.6m——建物に沿うように湾曲した形状を持つこのビジョンは、2015年の設置当時、大きな話題となった。

『このビジョンは当時、当社が取り扱っていた中で最大規模のもので、設置にあたっては一大プロジェクトとなりました。もともと看板が付いていた場所だったこともあり、サイズを決めること自体はそれほど大変ではありませんでした。問題となったのは重さです。建物の関係者の方々と話し合いながら、耐荷重の計算を行う必要がありました』。

『音も特徴的で、指向性スピーカーを活用し、横断歩道を歩いている方々に、ちゃんと音が届く設計を行っています』。

そして2025年、同社の歴史に新たな1ページが加わった。渋谷駅前会館の屋上に設置された「渋谷西口ビジョン」である。高さ約17.4m、幅約23.2m——渋谷最大級のスクリーンは、深夜に大型クレーンを使い、ビル10階相当の高さまで荷上げされた。駅前という立地上、周辺施設のメンテナンス業者とのスケジュール調整、各種許可の取得には多大な労力を要したという。

街に溶け込むための"見えない仕事"

街頭ビジョンは、ただ設置してコンテンツを流せばよいというものではない。街に溶け込み、人々に受け入れられるためには、継続的なメンテナンスと細やかな配慮が欠かせない。

『ビジョンは必ず劣化します。5年使用すればその分、輝度も落ちていきます。LEDパネルを1枚だけ交換すると、その部分だけ新品の明るさになってしまうため、輝度を調整したり、目立ちにくいビジョンの端のほうに設置したりといった工夫をしてきました』。

そして、運営において最も神経を使うのが「音」だという。

『ビジョン設置にはさまざまな課題がありますが、最も大変なのは音だと思います。まず条例が厳しく、むやみにスピーカーを設置することはできません。それをクリアしたとしても、クレームを防ぐために、特定の方向に音を集中させる指向性スピーカーを導入し、角度を細かく調整したり、低音が響きすぎないようイコライゼーションを行ったりする必要があります。専門のエンジニアにチューニングを依頼し、時間帯によってボリューム調整も行っています』。

現在の渋谷にはビジョンが数多く存在するが、音を出せるビジョンは限られている。すでに拡声器が設置されている場所から50m以内には追加設置ができないという条例があり、新たにスピーカー付きビジョンを設置できる場所は、限られてきます。

編成を支えるオペレーションの力

渋谷の街頭ビジョン運営において、最も重要な課題のひとつがビジョン同士のシンクロだ。

『ソフト上で完全に同期を取っているわけではなく、それぞれが決められた時間に再生される仕組みなので、正確な時間管理ができるソフトでなければなりません。特に当社は、イレギュラーな放送や急な差し替え、即時の広告削除など、突発的な対応が多く、人の手によるオペレーションも欠かせません』。

編成というとソフトウェアに目が向きがちだが、それ以上に重要なのはオペレーターの質だと担当者は強調する。テクノロジーと人の力、その両輪があってこそ、渋谷の街頭ビジョンは日々、安定した運営を続けることができている。

文化インフラとしてのビジョンへ

街頭ビジョンは、広告を映すだけの装置ではない。その街の風景を形づくり、人々の記憶に刻まれる存在でもある。シブヤテレビジョンが長年にわたって積み重ねてきた「街に溶け込むための努力」——それは、ビジョンを単なる広告媒体から、都市の文化インフラへと昇華させるための土台となってきた。

SCREENS CONTEXTUALIZEDは、そうした積み重ねの先にある挑戦だ。広告が一時停止し、アートが映し出されるとき、街頭ビジョンは新たな役割を担う。人々が足を止め、見上げ、何かを感じる——その瞬間、渋谷の街は"通過する場所"から"体験する場所"へと変わる。

2026年2月、シブヤテレビジョンが運営するスクリーンは、渋谷の新たな風景を映し出す。

Exhibition

集英社ビジョン
2026年2月13日 〜 15日 / 渋谷モディ壁面 / 橋本麦《Permutation》
渋谷西口ビジョン
2026年2月13日 〜 15日 / 渋谷駅前会館屋上 / eziraros《渋谷残像》

Artists

橋本麦

橋本麦

アニメーションから生成アート、インタラクティブデザインまで様々なメディアを横断して制作する映像作家。実験映画とハッカー文化の影響を受け、視覚表現とテクノロジーの両方の領域において新たな可能性を探究する。

eziraros

eziraros

台湾のウェブデザイナー兼開発者。2022年にひょんなことからジェネレーティブアートの世界に足を踏み入れ、創作活動を開始。その後、作品の発表や展示会への参加に加え、台北や日本でワークショップの講師やトークイベントの登壇など幅広く活動している。コードを用いて日常の風景を描き出し、今の時代を記録することを好む。

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